『マネー・ボール 奇跡のチームをつくった男』



マネー・ボール 奇跡のチームをつくった男』(マイケル・ルイス文藝春秋/1600円)を読み終える。アメリカのメジャーリーグ球団・オークランド・アスレチックスゼネラルマネジャービリー・ビーンが、ニューヨーク・ヤンキースなど他のメジャーリーグチームよりもはるかに少ない資金ながら、いかにしてアスレチックスを強力なチームに作り上げていったかを描いたノンフィクションである。
その「一般的野球界」の観点からは見逃されていたり、弱点を抱えているがために低い評価を与えられていた選手たちを集めたチームが、ビリー・ビーンの強烈な個性の元、資金力に勝るチームを上回る実績をあげていく様は痛快で、わくわくしながら最後まで一気に読み進んでしまった。ユーモアにあふれた語り口も楽しく、めちゃめちゃおもしろい本だった。
ちなみにアスレチックスが重視していたのは、打撃能力では、出塁率と1打席あたりの投球数。ストライクゾーンをコントロールできる能力が、成功する可能性ともつながりが深いらしく、そのわかりやすい指標として四球の数も重んじているそうだ。また投手の能力に関して意味のあるデータは、与四球数、被本塁打数、奪三振数、被長打数。《ホームラン以外のフェアボールを安打にしない能力は、どのメジャーリーグ投手も大差ない》(ボロス・マクラッケン/P.307)との記述には、ちょっと驚かされた。こういった通常とは異なるアプローチを強力に押し進めることができたのは、ビリー・ビーンが、成功はできなかったもののメジャーリーガーの経験があるということと関係あるのかもしれないなとは思った。

『マネー・ボール 奇跡のチームをつくった男』