『不惑 桑田・清原と戦った男たち』



不惑 桑田・清原と戦った男たち』(矢崎良一/ぴあ/1400円)を読み終える。1983年、15歳の夏に甲子園にデビューし、2007年に40歳・不惑を迎えた桑田真澄清原和博。彼らと同学年(1967年4月2日生〜1968年4月1日生)の野球人たち9人に、その野球人生と、桑田・清原(以下KK)との関わりを語ってもらったインタビュー集である。ちなみに桑田真澄は学年で最も遅い1968年4月1日生まれ。
この本で取り上げられた9人は、KKといっしょにプレイした者から、まったく接点のなかった者まで様々。それぞれKKとの距離は異なるものの、同じフィールドにいた「強く眩い光を放つ」同級生の存在を通して語られる彼ら自身の人生は、同世代ということもあり強く心に響く。「プレイヤー」としての人生を終え、我々より一足先に第二の人生を歩み始めた彼らのことばは、年代的に「プレイヤー」としての立ち位置が変わりつつある自分にとって、すごく重みを感じた。
著者・矢崎良一は9人に対し、インタビューの最後に「桑田と清原は幸せな人生だと思いますか?」と問いかけている。これからの彼らの長い人生、はたしてどういう展開を見せるかはわからないが、同世代の選手の中で最後までプレイできたという事実、それ以上に野球人として幸せなことはあるのだろうかと思った。
『斎藤世代 流しのブルペンキャッチャーが見つめた青春』(安倍昌彦/日本放送出版協会/1300円)、『松坂世代』(矢崎良一/河出書房新社/1800円)、『不惑 桑田・清原と戦った男たち』(矢崎良一/ぴあ/1400円)と3世代の本を読んでみたが、世代間の違いというのはそれほど感じられず、「野球人」というひとつの「存在」の、少年期 (斎藤世代)、青年期(松坂世代)、晩年(桑田・清原世代)を追体験しているような気持ちになった。目に曇りなく、ひたすら未来を見つめる少年期。挫折を知り、しかし自分の可能性を信じている青年期。プレイヤーとしての人生を終え、第二の人生を歩み始めた晩年。多数の選手の人生がぎゅっと凝縮された「野球人の人生」は、ひじょうに読み応えがあった。

『不惑 桑田・清原と戦った男たち』