『めぐらし屋』



めぐらし屋』(堀江敏幸毎日新聞社/1400円)を読み終える。離れて暮らしていた父親を亡くした四十歳くらいの独身女性が、その遺品の中から「めぐらし屋」と書かれたノートを見つけたことをきっかけに、それまで知らなかった父親の姿を少しずつ知るようになっていくというお話である。静謐で折り目正しい雰囲気の作品で、読んでいて『博士の愛した数式』や『センセイの鞄』のような肌触りを感じた。読後感のいい小説だった。