『熊の敷石』



『熊の敷石』(堀江敏幸講談社/1400円)を読み終える。124回芥川賞を受賞した表題作『熊の敷石』のほか、小品2つを収めた作品集である。3作とも私小説の体裁をとっている。
『熊の敷石』は、フランス留学の経験のある「私」が仕事でフランスを再訪した際、数年来会っていない旧友の写真家ヤンに会うために、彼のいるノルマンディーの小村におもむいたときの体験がつづられていく。 なんてことのない会話から、ユダヤ人であるヤンの一族のホロコーストにまつわる重い過去や、隣人の子供のつらい現状が浮かび上がってくる。
ドラマチックさはないが、淡々とした空気とフランスの雰囲気が魅力的な小説だった。

『熊の敷石』