『朽ちた樹々の枝の下で』



『朽ちた樹々の枝の下で』(真保裕一講談社文庫/876円)を読み終える。妻を事故で失ったことで、仕事を辞め都会を離れて森林作業員となった男が主人公のサスペンス小説である。自衛隊演習場に隣接する森で救出した女性が病院から逃亡してしまったため、その行方を探し出そうとしたところ、その背後に潜む事件に巻き込まれていくというストーリー。物語はよく練りこまれていて、効果的に配された謎・イベントにより、読者の気もちを前へ前へとドライブさせていくようなつくりとなっている。亡き妻への想いから、事件に入れ込んでしまう主人公の描き方もうまい。サスペンスとセンティメンタリズムが程よく案配された、ひじょうに読みごたえのあるおもしろい小説だった。

『朽ちた樹々の枝の下で』