『レディ・ジョ−カ−』



『レディ・ジョ−カ−』(高村薫毎日新聞社/上・下各1700円)を読み終える。グリコ・森永事件をモデルにした企業恐喝事件をストーリーの中心に、日本の裏社会を描いた小説である。『マークスの山』、『照柿』と同様、合田雄一郎警部補が主人公。 上巻426ページ、下巻443ページ、各2段組という重厚長大な作品ながら、恐喝の犯人グループ、恐喝される企業の関係者、事件を追う新聞記者、捜査を行なう警察官たちの姿が濃密かつ詳細に書き込まれ、力ずくで物語世界に引き込まれて一気に読まされてしまう。結末の着け方にやや物足りなさを感じたのだが、全体を通して緊張感が持続しているのにはひじょうに感心した。
またそれぞれの登場人物の仕事に対して悩んでいる姿に、自分自身も、仕事に対する立ち位置などをあらためて考えさせられた。

『レディ・ジョーカー・上』

『レディ・ジョーカー・下』