電子書籍端末はユーザーに対し、どんなメリットを提示できるのか?

Business Media 誠の「現役東大生・森田徹の今週も“かしこいフリ”のエントリー『電子書籍キャズムを超えられるか?――iPodに学ぶ普及への道』(http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0903/24/news003.html)で、iTunes StoreiPodの成功例から電子書籍の未来について語っているんだけど、はたして「ふつう」のユーザーって電子書籍を欲しているのかなあ? と思った。

現在の電子書籍市場をiPod登場当時のデジタル音楽の状況に照らし合わせてみても、それほど劣っているところは見当たらない。違法ファイルを推進するわけではないが、今日も有名巨大掲示板ではコミックやライトノベルをスキャンした画像詰めZIP/RARファイルがやりとりされているし、有名ファイル共有ソフトのハッシュデータベースで「一般コミック」を検索すると1年以内のものでも1万件以上、「一般小説」だとやや劣るがそれでも2500件ほどヒットする。イノベーターやアーリー・アダプターなどの先進的な人々は完成度の高い端末を心待ちにしていると言って良いだろう。

背景

* コアMacユーザーの存在 → 有名巨大掲示板の住人たちの存在
* MP3の普及 → PDFや画像詰めZIP/RARファイルの普及
* P2Pの躍進による違法コピーの氾濫 → 幸か不幸か氾濫している
* 既存メディア(CD)からの移行技術の浸透 → ScanSnapなどのスキャナが普及
* iPod miniの登場(価格の低廉化) → 今後の課題

森田が見逃しているのは、iPodの前には、携帯MDプレイヤー、携帯CDプレイヤー、携帯カセットプレイヤーなどの携帯用音楽プレイヤーがあり、ユーザーは、そういった機器にお金を払う習慣があったこと。iPodが既存の携帯音楽プレイヤーより優れていたのは、なんといってもそれまでとは比べられないくらいの数の音楽を持ち出せるようにしたことで、その優位を元にiPodが既存の携帯音楽プレイヤーからスムーズに置き換わったことが、iTunes Storeの成長にもつながったのではないかと思った。
森田が端末の価格をいくらぐらいに想定しているのかはわからないんだけど、ユーザーが端末に費やしたコストに見合うメリットって、単純に書籍をデジタル化しただけの電子出版からは得られないような気がするんだよね。だったら別に普通に紙の本を買ったっていいんじゃないかな?
あとiPodユーザーでiTunes Storeで買い物をする人って、ユーザー数ほど多いとは思えないんだよな。iPodのメインの使い方って、CDをリッピングして持ち出すということだと思うので、iPodiTunes Storeの話と、電子出版の話を同じにするのはやや無理があると思いました。