『解ってたまるか!』



劇団四季の舞台『解ってたまるか!』(at:自由劇場)を観る。宿泊客を人質に、ライフルを持ってホテルに立てこもった殺人犯が主人公の作品である。脚本は福田恆存。1968年に起こった金嬉老事件をモチーフに、戦後の日本を席巻した"左翼インテリゲンチュア"を、喜劇の中で批判するというのがコンセプト。
吉本新喜劇に慣れた自分にとって「笑い」のポイントは異なっていたが、主人公・村木の立て板に水な長回しのセリフはひじょうに演劇的で、「お芝居を観た」という気分に浸ることができた。
本編観劇の後、オフステージ講座『平和の砦の人質会議』を観る。『解ってたまるか!』の出演者たちがお芝居の裏話を語ってくれる企画で、今回は人質役の5人の対談である。甘粕(オーアマ)、関山(カレススキ)、静、奥澤(ヘッピリ)、結城(ユダ)を演じた5人が出てきたのだが、劇中のパジャマ姿とは打って変わって、私服姿は役者っぽかった。
彼らの話で初めて気づいたのが、舞台が平面ではなく傾斜していたということ。セット全体のパースがゆがんでいるのはわかったが、床まで傾けているとは思いもしなかった。また劇中で人質たちが村木に協力することに対する違和感も、人質たちの心理状態が後にストックホルム症候群(この脚本が書かれたのが1968年、この症例の語源となった事件は1973年)として名付けられる状態だと知ったことで解消されたり、結城 (ユダ)役の芹沢秀明の「村木は相手の力を引き出して技をかける人、無防備な人には手出しできない」との村木評にうなずかされたり、内容を消化するのにひじょうに参考になる企画だった。個人的には、奥澤(ヘッピリ)役の坂本岳大の、だらっとしたトークが笑えました。