『ベルカ、吠えないのか?』



『ベルカ、吠えないのか?』(古川日出男文藝春秋/1714円)を読み終える。第二次世界大戦末期、キスカ島に残された日本の軍用犬3頭とアメリカの軍用犬1頭に始まる、犬たちの物語である。第二次世界大戦後の東西の対立を軸にした、“戦争の世紀=20世紀”に翻弄される、彼ら彼女らとその子孫の姿を描いている。
主人公が犬ということもあり、およそ50年強(1943年〜199X年)という時間の枠組みの中でも登場するキャラクター(犬)たちは幾世代にも及び、その繁殖する力により、一族の物語は重層化し世界は拡大していく。過去と現在を往還しつつめまぐるしく展開するストーリーは読み応え抜群で、大きく、そして密度の濃い歴史のドラマを楽しむことができた。おもしろい作品だった。

『ベルカ、吠えないのか?』