『ウォーターランド』



ウォーターランド』(グレアム・スウィフト/新潮クレスト・ブックス/2600円)を読み終える。妻が引き起こした嬰児誘拐事件によって退職を迫られている歴史教師が、生徒たちにむかって生まれ故郷の歴史、そこで生きてきた一族の歴史、その末裔である自分の歴史、そしてそれらに関連するいわゆる“歴史”について語った物語である。現在から遠い過去まで、ウナギの一生から第二次世界大戦まで、語られる内容の範囲は広くかつアトランダムに配されているのだが、エピソードは次第に有機的に関連し合い、重厚な物語世界が構築されていく。歴史(history)と物語(story)の絡み合いのおもしろさが存分に楽しめる、ひじょうに読み応えのある小説だった。おすすめ。