『プロ野球2.0 立命館大学経営学部スポーツビジネス講義録』



プロ野球2.0 立命館大学経営学部スポーツビジネス講義録』(小島克典/扶桑社新書/720円)を読み終える。立命館大学・小島克典客員教授の講義を新書化したものである。講義は野球ビジネスに関わる人たちを招いての対談形式。この新書には、ボストン・レッドソックスCEO(書き下ろし)、スポーツエージェント・団野村、スポーツ弁護士、メディア(スポーツ新聞、Web)、マーケティング担当者(阪神タイガース福岡ソフトバンクホークス)、球団社長(北海道日本ハムファイターズ、元横浜ベイスターズ)らとの対談が収録されている。
野球というスポーツをビジネスという側面から見る機会がなかったので、書かれているあれこれはひじょうに新鮮だったし、読んでいて楽しかった。中でも興味深かったのは、マーケティング担当者との対談とスポーツ弁護士との対談。
マーケティング担当者との対談で印象に残ったのが、スポーツビジネスの立ち位置。チームは主に勝つことによって(もちろんそれだけではないが)ファンにその魅力を提示するわけだが、チームは必ずしも強い時期ばかりではない。チーム状態に影響を受けることを否定せず(優勝しても最下位だったとしても売上が変わらないっていうのは、プロチームとしてどうなんだろう的な)、ビジネスとして、チーム状態にできるだけ左右されずに収益確保をめざしていくという、スポーツビジネスならではのスタンスがおもしろかった。また福岡ソフトバンクホークスのスタッフの「あくまでお客さんを楽しませるためのサービスの一つとして、ホークスというチームがあるという考え方が強いと思います」ということばにも興味を引かれた。
スポーツ弁護士との対談の中で印象に残ったのは、リーグスポーツの構成要素の関係性。スポーツ弁護士によると、「選手」「クラブ」「リーグ」のトライアングルが大事とのこと。個人的には、それに「ファン」という要素を含めた四角錐構造も考察してみていいのではないかと思う。自分自身は早稲田大学ラグビー蹴球部のちょっと濃いめのファンをやっているのだが、早大ラグビー部によるファンに向けての情報発信、地域との交流などに接するにつけ、ファンをトライアングルに引き寄せていくことが、そのスポーツ全体の成長に寄与するのではないだろうかと感じたからである。
自分は1シーズンに球場に足を運ぶのは2〜3回程度で、プロ野球ファンとしては薄いのだが、そんな薄いファンにもいろいろとプロ野球のことを考えさせてくれるおもしろい本だった。