『西南戦争―西郷隆盛と日本最後の内戦』



西南戦争―西郷隆盛と日本最後の内戦』(小川原正道/中央公論新社/820円)を読み終える。NHK大河ドラマ篤姫』の影響か幕末の薩摩に触れた歴史サイトも多く、その中で本タイトルを見つける。各所で評価が高かったため、興味を引かれて読むことにしたわけである。
本書では、西郷隆盛が「明治六年政変」で下野してから蹶起に至るまでの鹿児島の状況にはじまり、熊本城、田原坂での激戦を経て、薩軍が九州を敗走していく様、戦後、反政府勢力が民権運動にシフトしていく様を、多くの関連資料からつぶさに描いている。資料からの引用がひじょうに巧みで、著者の描き出す情景は説得力にあふれ、一気に読まされる。西郷隆盛という人物にはそれほど強い興味があったわけではないのだが、象徴として鹿児島の不平士族をまとめあげる、その存在の大きさがあらためて印象に残った。読み応えのあるおもしろい本だった。