『それぞれのファン研究―I am a fan (ポップカルチュア選書「レッセーの荒野」)』



『それぞれのファン研究―I am a fan (ポップカルチュア選書「レッセーの荒野」)』 (玉川博章・名藤多香子・小林義寛・岡井崇之・東園子・辻泉/風塵社/1800円)を読み終える。様々なジャンルのファンであり研究者でもある執筆者たちが、自分たちが関係するジャンルの「ファン」に対し、学術的にアプローチした本である。取り上げられた題材は「コミックマーケット」、「二次創作」、「エロゲー」、「総合格闘技」、「宝塚」、「ジャニーズ」。
個人的に興味を惹かれたのは、「対象」と「ファン」の関係性より、「ファン」と「ファン」の関係性に注目した内容が多かったこと。中でもインターネットの影響に関する言及が興味深かった。自分自身も一人の「ファン」であり、さまざまなファンとの「インターネット(含むパソコン通信)を使用したコミュニケーション」と「オフでのリアルなコミュニケーション」の往復による、対象へのコミットの深化を実感しているので、読んでいて納得できる点が多々あった。また切り口とアプローチが様々であること、「現場」にいると近すぎたり当たり前だったりすることが言語化されていることなどから、「ファン」という存在を俯瞰で見ることができたのもよかった。
ジャンルとしておもしろかったのは「宝塚」。あまり知識がなかったので、本名・ニックネーム・芸名によるキャラクターの多層化など、構造に関する様々な考察は勉強になった。

『それぞれのファン研究―I am a fan (ポップカルチュア選書「レッセーの荒野」)』