『山ん中の獅見朋成雄』



『山ん中の獅見朋成雄』(舞城王太郎講談社/1500円)を読み終える。背中に髭を持つ福井県西暁の中学生、獅見朋成雄が主人公の小説である。人間の手によって構築された山奥の“異世界”を舞台にした奇譚で、そこで暮らすはめになった主人公の姿が描かれている。いわば少年版『千と千尋の神隠し』(ほんのりバイオレンステイスト)。
この作品の魅力は、個性的な主人公・成雄のキャラクター。ひじょうにマイペースで、“異世界”にもすんなりとけこんでいってしまう様が笑える。舞城作品で一番好きな『世界は密室でできている。』同様、大人と子どもの境界期の少年の姿がビビットに描かれていて、読んでいて楽しい小説だった。

『山ん中の獅見朋成雄』