『ニシノユキヒコの恋と冒険』



『ニシノユキヒコの恋と冒険』(川上弘美/新潮社/1400円)を読み終える。ニシノユキヒコという男の恋愛を描いた連作短編集で、彼を愛した10人の女性が彼との思い出を回想していく、という形で綴られている。タイトルから華やかな恋愛遍歴ものを想像していたのだが、女性を本当に愛することのできない(故に本当に愛されることのない)男を描いているせいか、穏やかな文体なんだけど、底には痛みを生じさせるクールさが感じられる。時折イテテと思いつつ、10人の女性たちのキャラクター造型の巧みさで、さらっと楽しく読むことができた。

『ニシノユキヒコの恋と冒険』