『せん−さく』



『せん−さく』(永嶋恵美/幻冬舎/1700円)を読み終える。ゲームサイトのオフで出会った29歳の人妻と、15歳の中学生男子の逃避行を描いた作品である。当初は単なる中学生の家出に、人妻が保護者的に同行していくという流れなのだが、旅の途中で中学生男子の友人の両親が殺されたことが提示されると、それをきっかけにストーリーは劇的に変質していく。中盤からラストにかけての展開はひじょうにドラマチックで、一気に読まされてしまう。人間の、外部に現れるもの、内部に潜むものの対称を描くのに、インターネットにおける個人の在り様をうまく使っていたのが印象的だった。
ひじょうにおもしろい小説だった。おすすめ。

『せん−さく』