『P.I.P. プリズナー・イン・プノンペン』



『P.I.P. プリズナー・イン・プノンペン』(沢井鯨/小学館/1200円)を読み終える。旅行中のプノンペンにおいていわれのない罪で逮捕され、半年間獄中生活をおくったという作者の実体験を基に書かれた小説である。
カンボジアで逮捕された主人公が、信用できない司法システム(警察含む)や同房の囚人たちとのトラブルを乗り越え、苦闘の果てに脱出するまでが描かれている。ポルポトアンコール・ワットなど、名前は知っていてもよくわからなかったカンボジアの事情が、近代史とあわせてきっちりと描かれ、驚きとともに目の前に提示される。人間の暗部がこれでもかと露にされていて少々ダークな気分になるが、圧倒的な迫力で一気に読まされるひじょうにおもしろい作品だった。

『P.I.P. プリズナー・イン・プノンペン』