『九つの殺人メルヘン』



『九つの殺人メルヘン』(鯨統一郎/光文社カッパ・ノベルス/838円)を読み終える。日本酒バーを舞台にした安楽椅子探偵ものの連作短編集である。デビュー作『邪馬台国はどこですか?』ではバーを舞台に歴史の謎を語り倒していたが、今回のモチーフはグリム童話。登場人物の刑事が捜査に携わっている事件について話をすると、童話を研究している女子大生がグリム童話の新解釈になぞらえて、その謎を解き明かしていくというストーリーである。モチーフ自体もユニークだが、有栖川有栖が提示した基本的なアリバイ・トリックの九つのパターンをそれぞれ九つの短編に入れていたり、ミステリ的な趣向も凝っている。
語り口のおもしろさと情報量の多さが、ひじょうに楽しい小説だった。

『九つの殺人メルヘン』