『壬生義士伝・上』『壬生義士伝・下』



友人に勧められた本、『壬生義士伝・上』『壬生義士伝・下』(浅田次郎/文春文庫/各590円)を読み終える。新撰組隊士・吉村貫一郎を主人公とした小説である。物語はふたつの軸から成り立っていて、ひとつは鳥羽伏見戦後に満身創痍で南部藩蔵屋敷にたどり着いた吉村の回想。もうひとつは、大正時代に彼の周囲の人間が取材者に語る吉村の想い出である。そのふたつを交互に織り交ぜるという構成により、貧しいが故に新撰組に入隊した吉村貫一郎という人間像を、内と外から浮かび上がらせている。
哀しいくらいにまっすぐな吉村の姿を通して、子を思う親の心、友を思いやる心、凛と生きる人たちの心情が深く静かに心を打つ。自分自身を振り返り、自分の生き方を省みて、背筋が自然と伸びるのを感じる作品だった。まじおすすめである。電車で読むのはやめるべきなくらいおすすめである(電車の中で涙をこぼすのはちょっとねえ(笑))。
個人的には、土方歳三がかっこよく描かれていたのがうれしかった。新撰組には司馬遼太郎の『燃えよ剣』から入ったので、土方派なのですよ。

『壬生義士伝・上』

『壬生義士伝・下』