『真珠夫人・上』『真珠夫人・下』



真珠夫人・上』(菊池寛新潮文庫/400円)、『真珠夫人・下』(菊池寛新潮文庫/438円)を読み終える。成金の実業家のたくらみにより、その妻になってしまった華族令嬢の波乱の人生を描いた物語である。話題の昼メロの原作ということで、興味をひかれて読み始めた。内容は、昼メロにこの作品を持ってきた制作者の慧眼に、敬意を払いたくなるほどのどろどろっぷり。菊池寛、侮れない男である。
本来なら主人公・瑠璃子に共感しながら読むのだろうが、主人公の恋人(本来はいいものサイド)の小賢しげなことばに選民意識を感じてむかついてしまい、悪者(であるはず)の成金の実業家を応援しながら読み進めた。
主人公の復讐の過程での変貌から、いかに人の心がダークサイドに影響されやすいかが描かれている。よくも悪くも“強力”ということばがぴったりの主人公・瑠璃子に、一気にラストまで引っぱられてしまった。

『真珠夫人・上』

『真珠夫人・下』