『ジェイルバ−ド』



『ジェイルバ−ド』(カ−ト・ヴォネガット/ハヤカワ文庫/640円)を読み終える。ウォーターゲート事件の巻きぞえをくって囚人(ジェイルバード)になった主人公の、一種の回想録的物語である。主人公がどのように作られたか、彼の生まれる前のできごとに始まり、1980年に彼がどうなるのかが描かれている。もちろんカート・ヴォネガットの作品なだけに単なる回想録であるはずはなく、時制を交錯させたり、奇妙なエピソードを組みこんだりすることで、物語にユーモアやブラックさやシニカルさを与えている。
ぱっと見はユーモラスな感じではあるものの、底に流れるものはひじょうに冷たく、絶望や締念が胸にぐっとくる作品だった。

『ジェイルバ−ド』