『新宿鮫風化水脈』



新宿鮫風化水脈』(大沢在昌毎日新聞社/1700円)を読み終える。今回は鮫島が探っている高級自動車窃盗犯事件を軸に、1作目に登場した真壁というヤクザとその真壁に殺されかけた中国人が物語にからむ展開となっている。あわせて鮫島が事件を追いかける過程で発見された、過去の殺人事件もストーリーに関係してくる。過去の新宿と現代の新宿が描かれることで、物語が重層化し深みを感じさせるとともに、このシリーズのもう1つの主人公である新宿の姿がよりくっきりと浮かび上がってくる。また1作目の登場人物と新しい登場人物が描かれていることも、同様の効果を与えつつシリーズ読者への楽しみも与えてくれている。
ストーリーは長大であるが緊密で、ぐいぐいと物語世界に引き込まれてしまう。結末も納得の内容で、大満足の1冊だった。

『新宿鮫風化水脈』