『謀将真田昌幸・上』『謀将真田昌幸・下』



『謀将真田昌幸・上』(南原幹雄/角川文庫/724円)、『謀将真田昌幸・下』(南原幹雄/角川文庫/724円)を読み終える。表題には“真田昌幸”と謳われているが、実質内容は真田二代記というべきものである。上下巻の内、上巻の大半は昌幸の父・幸隆の話で、上巻のラスト近くになってようやく昌幸が登場してくる。真田昌幸は幸村の父として、武田信玄・勝頼の側近として、わりと名前を見かけたのだが、真田幸隆がここまで登場する本を読むのはまったく初めて。どこまで史実に則っているかはわからないものの、没落した一族を再興させていく展開はひじょうにドラマティック。幸隆の長男・次男が長篠の合戦で戦死して、昌幸が小説の表舞台に登場してからは、より一層、真田一族が領土を拡大していく。それにあわせてストーリーが拡がっていく様は、読んでいてひじょうにわくわくさせられた。後半になるとややパワ−が落ちるが、それまでの戦乱から平穏な世の中になったことが、ストーリーに影響を与えているからだろう。
構成・文体など小説的なできはそれほどいいとは思わなかったものの、真田幸隆という好素材が使われているおかげで、最後までおもしろく読むことができた。

『謀将真田昌幸・上』

『謀将真田昌幸・下』