『歴史と出会う』



『歴史と出会う』(網野善彦洋泉社/660円)を読み終える。歴史学者網野善彦の書いた短文、加わった対談、インタビューなどを集めた本である。この中で興味を惹かれたのは、北方謙三宮崎駿など歴史家ではない人たちとの対談。相手が歴史をモチーフにした作品(北方は南北朝もの、宮崎は『もののけ姫』)を作りつつも専門家ではないため、歴史家ではない読者にも内容がわかりやすく、作家の想像力から生み出されたストーリーと歴史の事実とのキャッチポールが刺激的でおもしろかった。
【メモ】
「日本」という国の名前が、はじめて正式に決められ、日本国が地球上に現われたのは七世紀末から八世紀初めです。だからそれ以前には「日本」も「日本人」もいないわけですし、逆にいつか「日本」という国名が変わる可能性もある。つまり国民の総意があれば変えることもできるのです。そう言う意味で「日本」を徹底して相対化して教えなかった点が自己批判の一点です。それと日本は農業国であり、百姓は農民だと教えたこと、さらに日本は孤立した島国だと教えたこと。この三点を自己批判すると話したのです。
(歴史と出会う/P.86/網野善彦洋泉社/660円)
士農工商イデオロギーで、実態ではありません。
(歴史と出会う/P.149/網野善彦洋泉社/660円)

能登の輪島も、瀬戸内海の倉敷も村ですから、そこにいる商人や船持などはみな百姓、水呑になってしまうんですよ。
(歴史と出会う/P.149/網野善彦洋泉社/660円)
網野 これまで農民が人口の八割以上を占めていたとされましたが、実際は、多く見積もっても四割くらいだと思います。それなのに農民一色に考えられてきたのは、明治政府が戸籍をつくるとき、士農工商で分けて、漁民も林業をしている人も、「村」の商人、職人も、「百姓」はみな「農」にしちゃったからですよ。
宮崎 士農工商をはっきり分けたのは明治政府だったのか(笑)。
(歴史と出会う/P.150/網野善彦洋泉社/660円)
室町期は完全に銭の交換経済ですよ。現銭だけでなくて、十四〜十五世紀には手形が流通する時代になっていましたから、大量な現銭輸送はあまりやらなくなります。
(歴史と出会う/P.152/網野善彦洋泉社/660円)

【メモ2】
『後世への最大遺物』内村鑑三
『中世藝能史の研究』林屋辰三郎

『歴史と出会う』