『冷蔵庫のうえの人生』



『冷蔵庫のうえの人生』(アリス・カイパース文藝春秋/1200円)を読み終える。冷蔵庫のドアに残された、母と15歳の娘の伝言メモの往還で構成された小説である。病気に侵された母が亡くなるまでの、母娘の一年間のやり取りが記されている。メモとして切り取られているのは日常の限られた一コマなのだが、シンプルな描写だからこそ、文章に書かれていないこと、メモとメモとの間に起きたことを想像する余地があり、ふたりの物語をより自分の側に近付けることができる。いろいろなものが削ぎ落とされた感じのする静かな小説で、母娘の情愛がすっと心に染み込んだ。

『冷蔵庫のうえの人生』