『出口のない海』



出口のない海』を観る。太平洋戦争末期、海の特攻兵器・人間魚雷「回天」に乗ることを志願した若者たちの姿を描いた映画である。主人公は、甲子園の優勝投手で、進学先の明治大学でも投手を続けている青年。ヒジを故障し、新しい変化球の完成に復活をかけていたが、文科系学生の徴兵猶予の停止により海軍に志願することになる。
観ている途中で、早稲田大学で行なわれた展示会「一九四三年晩秋 最後の早慶戦」を思い出した。特攻により24歳の人生に終止符を打った近藤清を中心に、「最後の早慶戦」 (1943年10月16日開催)を振り返るという企画展なのだが、その時に感じた「60年前にも若者は存在し、青春と呼ばれる時期を過ごし、家族や友人たちと生活をおくっていたんだなあということ」や、掲示されていた早慶両校の戦死者名簿の長大さ、隣で見ていた老婦人の涙ぐんでいる姿などが、主人公たちの運命に重なりあい、涙がどーっとあふれてしまった。
今、自分が生きていること、ただそれだけでも幸せなことなんだなとあらためて感じた。

『出口のない海』