『デッドアイ・ディック』



『デッドアイ・ディック』(カート・ヴォネガット/ハヤカワ文庫/660円)を読み終える。金持ちだが才能のない芸術家を父に持った主人公の一生を、自叙伝形式で描いた小説である。自叙伝とはいえ、主人公が控えめなキャラクターであるため、どちらかといえばその風変わりな父親が、物語の方向と一家の運命を決定づけている。タイトル“デッドアイ・ディック”も主人公の引き起こした事件に由来するのだが、その事件も彼の父のためによりひどいこととなり、その結果、一家の運命が厳しいものになってしまうのである。
ストーリー的に救いのない小説ではあるものの、ヴォネガットのユーモラスなタッチでラストまで一気に読むことができた。

『デッドアイ・ディック』