『島津奔る』



『島津奔る』(池宮彰一郎/新潮社/上・1900円、下・1900円)を読み終える。関ヶ原の合戦前後の島津家を巡る物語である。関ヶ原の合戦に際し、西軍に属した島津軍はまったく戦闘行動を取らず、行なったことといえば、西軍の敗北が決定的になってから、東軍の間を突っ切って戦場を脱出したことくらいである。戦後、普通だったら取り潰し、良くて減封のところ、なんと島津は領国を安堵されてしまう。
昔から、なぜ島津は関ヶ原の合戦であのような行動をとったのか、なぜ領国が安堵されたのか不思議に思っていたため、この小説を読んでみることにした。
上記2点の疑問に対する小説内の答はあまり納得のいくものではなかったのだが、脱出行の大変さはがんがん伝わってきたし、薩摩隼人の頑固さ加減もよくわかった。
作者の主観が頻出するのにはちょっと閉口させられたが、題材が興味深いものだったため、最後まで楽しんで読むことができた。

『島津奔る・上』

『島津奔る・下』