『秋の花』



『秋の花』(北村薫創元推理文庫/480円)を読み終える。前の2作が短編集だったのでこれもそうかと思っていたのだが、実は長編だった(笑)。文化祭の前に校舎から転落死した後輩の女子高生の死の真相を探るのが、今回のストーリーである。まさにミステリといった作品だったこれまでの短編と比べ、細やかな書き込みがされていて私小説風な雰囲気を強く感じる。主人公である“私”が言う「私達って、そんなにもろいんでしょうか」に象徴される、ぼくたちの住むこの世界の不安定さが作品を通して語られている。痛みを感じさせるストーリーだが、読後感は悪くない。おもしろい作品でした。

『秋の花』